「利益は出ているのに、なぜかお金が足りない」——この経験をした経営者は少なくありません。これは会計上の「利益」と実際の「現金の動き」が必ずしも一致しないためです。最悪の場合、利益が出ているにもかかわらず手元現金が枯渇して倒産してしまう「黒字倒産」も起こりえます。
キャッシュフロー計算書(C/F:Cash Flow Statement)は、一定期間における現金・預金の増減を示す財務諸表です。損益計算書・貸借対照表と並ぶ「財務三表」の一つで、会社の実際の資金の流れを把握するために不可欠な書類です。このページでは、キャッシュフロー計算書の構造と読み方を解説します。
利益とキャッシュの違い
損益計算書上の「利益」と、実際の現金の増減が異なる理由を理解することが重要です。
売掛金の存在
売上高は取引が成立した時点で計上されますが、実際に代金を受け取るのは後日です。例えば、3月末に1,000万円の売上が計上されても、代金の回収は4月以降になる場合があります。この間は「利益は出ているが現金はない」という状態になります。
減価償却費の影響
減価償却費は損益計算書では費用として計上されますが、実際には現金の支出を伴いません。そのため、利益に減価償却費を加算した金額が実際のキャッシュの創出力に近くなります(これを「キャッシュフローマージン」と呼びます)。
3つのキャッシュフロー
キャッシュフロー計算書は「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのセクションから構成されます。
①営業活動によるキャッシュフロー
本業(営業活動)から生じた現金の増減を示します。主な要素は以下の通りです。
・税引前当期純利益
・減価償却費の加算(現金支出を伴わない費用のため)
・売掛金の増減(増加はキャッシュの流出)
・棚卸資産の増減(増加はキャッシュの流出)
・買掛金の増減(増加はキャッシュの流入)
営業キャッシュフローがプラスであれば、本業で現金を生み出せていることを意味します。これが安定してプラスであることが健全な経営の基本条件です。
②投資活動によるキャッシュフロー
設備投資・有価証券の取得・貸付金の回収など、投資活動に関連した現金の増減を示します。成長期の企業は積極的な設備投資を行うため、投資キャッシュフローがマイナスになることが多いです。これ自体は必ずしも悪いことではありませんが、投資の規模と事業の成長性が見合っているかを確認する必要があります。
③財務活動によるキャッシュフロー
借入・返済・増資・配当支払いなど、資金調達と返済に関連した現金の増減を示します。借入が多い企業は財務キャッシュフローがプラス(借入による現金流入)になりますが、返済が進むとマイナスになります。財務キャッシュフローが常に大きくプラスになっている場合は、借入依存度が高い可能性があります。
キャッシュフローのパターンで会社の状態を読む
3つのキャッシュフローの組み合わせを分析することで、会社の財務状態のパターンが見えてきます。
理想的なパターン(成熟企業)
営業CF:プラス(本業でしっかり稼いでいる)
投資CF:マイナス(事業への継続投資)
財務CF:マイナス(借入の返済が進んでいる)
このパターンは、本業の稼ぎで投資と借入返済を賄えている健全な状態を示します。
注意が必要なパターン
営業CF:マイナス(本業でキャッシュが出ていない)
投資CF:プラス(資産売却でしのいでいる)
財務CF:プラス(借入でしのいでいる)
このパターンは、本業の稼ぎが不十分で、資産売却や借入でキャッシュをまかなっている状態です。早急な収益改善策が必要です。
フリーキャッシュフロー(FCF)
フリーキャッシュフローは「営業CF+投資CF」で計算され、会社が自由に使えるキャッシュの量を示します。FCFがプラスであれば、事業への投資を行いながらも余剰キャッシュを生み出せていることを意味します。FCFが継続してプラスの企業は財務的に余裕があり、成長投資や借入返済に充てる資金を持っていると評価されます。
まとめ:キャッシュを意識した経営を
利益だけでなく、現金の流れを常に意識することが経営リスクの回避につながります。特に成長期の企業は、売上が増えるほど運転資金の必要量も増えるため、利益が出ていても資金が不足しやすい状況になります。キャッシュフロー計算書を定期的に確認し、資金繰りの見通しを把握することが経営の安定化に直結します。
まつうら総研では、キャッシュフロー管理を含めた財務健全化のサポートを行っています。「資金繰りが不安定で改善したい」「自社のキャッシュフローを正しく読み解きたい」という経営者の方は、ぜひご相談ください。