「売上が増えてきたけど、法人化した方がいいの?」——個人事業主として事業が軌道に乗ってくると、こうした疑問を持つ方が多くなります。法人化(法人成り)は節税・信用力向上・社会保障の改善といったメリットがある反面、コストや手間も増えます。
法人化のタイミングは一律に「売上〇〇万円になったら」とは言い切れません。事業の内容・家族構成・将来の目標によっても最適なタイミングは異なります。まつうら総研では、個々の状況を丁寧に分析した上で、法人化の判断をサポートしています。
このページでは、法人化を検討すべき主な判断基準と、メリット・デメリットを整理します。
法人化の主なメリット
①税負担の軽減
法人化の最大のメリットとして挙げられるのが税負担の軽減です。個人事業主の所得税は累進課税で最高45%(住民税・個人事業税を含めると約55%)になりますが、法人税の実効税率は中小企業の場合おおよそ20〜25%程度です。
所得が一定水準を超えると、個人で稼ぐよりも法人で稼いだ方が税負担が低くなります。一般的には課税所得が800万〜1,000万円を超えたあたりから、法人化による税メリットが大きくなる傾向があります(ただし個人の状況によって異なります)。
また、法人では役員報酬として自分に給与を支払うことができ、給与所得控除が適用されるため、さらに節税効果があります。家族を役員や従業員にして給与を支払うことで、所得を分散させることも可能です。
②消費税の免税期間のリセット
個人事業主が法人成りすると、新設法人として消費税の免税事業者になれる期間が最大2年間リセットされます(一定の条件を満たす場合)。売上が1,000万円を超えて消費税の課税事業者になりそうなタイミングで法人化することで、消費税の節税効果を得られることがあります。
③信用力・対外的な印象の向上
法人格を持つことで、取引先・金融機関・顧客からの信用力が向上します。特に大企業や上場企業との取引では、「個人事業主とは取引しない」という方針を持つ企業も一定数存在します。法人化によってこうした取引機会を広げることができます。
また、資金調達(銀行融資・補助金など)においても、法人の方が申請しやすい制度が多く存在します。
④社会保険の整備
法人の役員・従業員は、健康保険(協会けんぽ)と厚生年金への加入が義務付けられます。個人事業主の国民健康保険・国民年金と比べて、保険料の半分を法人が負担してくれるため、実質的な保険料の個人負担が下がります。
また、厚生年金は老後の年金受給額が国民年金より大幅に高くなるため、将来の生活保障という面でも大きなメリットがあります。
法人化のデメリット・注意点
①設立・維持コストの発生
株式会社の設立には登録免許税など最低でも約20〜25万円程度の費用が必要です(合同会社の場合は約6〜10万円程度)。また、法人化後は会計処理が複雑になり、税理士費用(年間30〜100万円程度)が発生するのが一般的です。
さらに、赤字であっても法人住民税の均等割(最低年7万円程度)がかかります。売上や利益が少ない段階で法人化すると、コストだけがかさむ結果になりかねません。
②事務負担の増加
法人は個人事業と比べて会計・税務・社会保険の事務処理が大幅に増えます。登記・決算・法人税申告・社会保険手続きなど、専門家(税理士・社労士)のサポートなしでは対応が難しくなる業務も出てきます。
事業の本業に集中したい方にとっては、こうした事務負担の増加がストレスになることもあります。
③資金の自由度が下がる
個人事業主であれば事業の収益を自由に生活費に使えますが、法人化すると会社のお金と個人のお金は明確に分けなければなりません。会社の資金を個人的な用途に使うことは法律上問題になる場合があります。役員報酬として設定した金額以外は、基本的に自由に引き出せません。
法人化を検討すべき具体的なタイミング
以下の条件に複数当てはまる場合、法人化を本格的に検討する価値があります。
・課税所得が800万円を超えてきた
・売上が1,000万円に近づき、消費税の課税事業者になりそう
・大企業・上場企業との取引を拡大したい
・従業員を雇用したい、または社会保険を整えたい
・家族に給与を払い、所得を分散させたい
・退職金(役員退職金)の積み立てを考えたい
・事業の承継・売却を将来視野に入れている
逆に、まだ売上・利益が少ない段階での法人化は、コストだけが増えて恩恵が得られない可能性があります。焦って法人化するよりも、まず個人事業主として事業基盤を固めることを優先しましょう。
法人化の判断は専門家と一緒に
法人化の判断は、税負担・社会保険・コスト・将来計画を総合的に考慮する必要があります。「売上がいくらになったら」という単純な判断基準では、最適なタイミングを見誤ることがあります。
まつうら総研では、現在の事業規模・収益・目標をもとに、法人化すべきかどうか・するとしたらいつ・どの形態が最適かを個別にシミュレーションします。「法人化した方がいいか迷っている」という方は、ぜひご相談ください。専門家の視点から、あなたの事業に最適な経営形態をご提案します。