「いつかは考えなければ」と思いつつも、具体的な行動を起こせていない——そういった経営者の方が多いのが事業承継の現状です。その最大の原因は、「何から手をつければよいかわからない」という漠然とした不安と、「まだ時間がある」という先送りの気持ちです。
この状況を打開するのが「承継計画(事業承継計画書)」の策定です。承継計画とは、誰に・いつまでに・どのような方法で事業を引き継ぐかを明文化した行動計画です。計画を作ることで、やるべきことが明確になり、関係者(後継者・家族・従業員・専門家)との合意形成も進めやすくなります。まつうら総研では、この承継計画の策定が事業承継対策の第一歩であると考えています。
承継計画に盛り込むべき主な内容
①現状分析
承継計画の出発点は、現状の正確な把握です。以下の点を整理します。
会社の基本情報(業種・売上・従業員数・主要取引先・金融機関との関係)・財務状況(売上高・利益・借入金・純資産・自社株評価額)・株主構成(誰が何株保有しているか・名義株の有無)・経営者個人の資産・負債状況・現在の後継者候補の状況、これらを一覧化することで、承継の課題が浮き彫りになります。多くの経営者がこの段階で「思っていたより自社株の評価が高い」「借入金が個人保証になっている」「名義株が残っている」などの課題を発見します。
②後継者の選定と育成計画
後継者候補を明確にし、その方が経営者として必要なスキル・知識・経験をいつまでに身につけるかを計画します。後継者育成の主な要素は「経営知識の習得」「財務・数字への理解」「取引先・金融機関・従業員との関係構築」「現場経験・意思決定の経験」です。
後継者候補が社内にいる場合は、段階的な役職昇格・プロジェクト担当・取引先への同行などを通じて実践的に育成します。後継者が社外(子ども・親族)にいる場合は、入社時期・異動計画・役員就任のタイミングを具体的にスケジューリングします。
育成には最低でも5年、できれば10年の時間を確保することが理想です。「60歳になったら始める」では遅いことも多く、50代前半からの着手を推奨しています。
③株式移転計画
経営権の移転の核心となる株式をいつ・どのような方法で・どの程度の規模で移転するかを計画します。贈与・売買・相続のいずれの方法を採用するか、事業承継税制を活用するかどうか、毎年の贈与税の非課税枠(110万円)をどう活用するかなど、具体的な方針を決定します。
株式移転計画は、税務上の効果だけでなく、経営の安定性(後継者がいつ議決権の過半数を取得するか)も考慮して設計します。また、相続が発生した場合に備えた遺言書の作成も、この計画の一部として位置づけます。
④財務対策計画
承継に向けた財務面での準備を計画します。自社株評価の引き下げ対策・借入金の圧縮・経営者保証の解除・役員退職金の準備・生命保険の見直しなど、財務面での課題に優先順位をつけて対応していきます。
特に「経営者保証の解除」は、後継者が新たに個人保証を引き受けることを拒否するケースが多く、M&Aによる承継でも買い手が引き受けを嫌うことがあります。金融庁・経済産業省が推進する「経営者保証改革プログラム」を活用し、計画的に保証を解除していくことが重要です。
⑤スケジュールの設定
「何年後に代表取締役を交代する」「何年後までに株式の○%を移転する」など、具体的な期限を設定します。計画は5年・10年単位の長期計画と、毎年の実施事項を記載した年次計画を組み合わせて作成します。
スケジュールには、経営者自身の健康・年齢だけでなく、会社の業績サイクル・税制改正のタイムライン・後継者の成長度合いなども考慮します。計画は固定ではなく、毎年見直して修正を加えることが前提です。
計画策定のプロセスと専門家の役割
計画策定は一人で行わない
承継計画は経営者一人で作成するものではありません。後継者・家族・主要幹部を巻き込みながら策定することで、計画の実効性が高まります。また、税理士・弁護士・司法書士・中小企業診断士などの専門家チームのサポートを受けることで、税務・法務・財務面での漏れを防ぐことができます。
まつうら総研では、財務トレーナー・経営コンサルタントとして、承継計画の策定プロセス全体をコーディネートします。各専門家との連携を調整し、経営者が迷わず意思決定できる環境を整えることが私たちの役割です。「どこから始めればいいかわからない」「専門家に相談したいが何を相談すればいいかわからない」という方は、まずお気軽にご連絡ください。