株式の引き継ぎ方法

自社株の移転手法と税負担を最小化するための戦略を解説します。

株式の引き継ぎ方法

中小企業の事業承継において、「誰が経営の主導権を握るか」を決定するのが株式の引き継ぎです。中小企業では経営者個人が株式の大部分を保有しているケースが多く、その株式を後継者に移転することが、経営権の承継そのものを意味します。

しかし、株式の引き継ぎには税務上の複雑な問題が伴います。自社株の評価額が高い場合、後継者が相続税・贈与税の支払いに窮するケースも珍しくありません。まつうら総研では、株式の引き継ぎを単なる財産移転として捉えるのではなく、事業承継全体の設計の中核として位置づけ、税負担を最小化しながら確実に経営権を移転するための支援を行っています。

株式引き継ぎの3つの基本手法

①生前贈与

現経営者が存命中に後継者へ株式を無償で移転する方法です。計画的に進められるため、承継のタイミングや移転額をコントロールしやすいことが最大のメリットです。毎年110万円の基礎控除を活用した暦年贈与を積み重ねることで、少しずつ株式を移転していく方法もあります。

ただし、一度に大量の株式を贈与すると多額の贈与税が発生します。贈与税は最高55%の累進税率が適用されるため、高評価の自社株を一括で贈与するのは現実的ではありません。そこで活用されるのが「相続時精算課税制度」や後述の「事業承継税制」です。

相続時精算課税制度を利用すると、2,500万円までの贈与について贈与税が非課税となり、超過分には一律20%の税率が適用されます。ただし、将来の相続発生時には相続財産に加算されるため、最終的な税負担を総合的に検討することが重要です。

②売買(有償譲渡)

後継者が現経営者から適正価額で株式を購入する方法です。後継者に資力がある場合や、現経営者が老後の生活資金を確保したい場合に選択されます。売買の場合、売り手(現経営者)には原則として20.315%の申告分離課税が適用されます。

注意が必要なのは「適正価額」の設定です。同族会社の株式売買では、税務上の適正価額(税法上の時価)を無視した低額または高額での取引は、贈与税・所得税の問題が生じる可能性があります。財産評価基本通達に基づく評価や、DCF法などの企業評価手法を用いた適切な価格設定が必要です。

後継者が購入資金を持っていない場合、金融機関からの融資を活用したMBO(マネジメント・バイアウト)スキームを組むことも可能です。ただし、融資の返済計画が会社の財務を圧迫しないよう慎重に設計する必要があります。

③相続

現経営者の死亡によって後継者が株式を相続する方法です。遺言書を作成しておくことで、特定の後継者に株式を集中させることができます。遺言書がない場合は、相続人全員による遺産分割協議が必要となり、後継者以外の相続人との交渉が難航するリスクがあります。

相続で株式を取得した場合は相続税が課されます。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」であり、自社株の評価額が高ければ多額の相続税が発生します。事前の対策なしに相続が発生すると、後継者が納税資金の確保に苦しむ事態になりかねません。

事業承継税制の活用

法人版事業承継税制の概要

法人版事業承継税制とは、後継者が先代経営者から非上場株式を相続・贈与により取得した場合に、一定の要件を満たすことで相続税・贈与税の納税を猶予(最終的には免除)する制度です。2018年の税制改正により大幅に拡充され、全株式を対象に100%の納税猶予が認められる「特例措置」が創設されました。

特例措置を利用するためには、2026年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出する必要があります(2027年12月31日までの贈与・相続が対象)。計画の提出期限が迫っているため、検討中の方は早急に専門家に相談することをお勧めします。

事業承継税制の主な要件と注意点

事業承継税制を利用するには、先代経営者・後継者・会社それぞれが一定の要件を満たす必要があります。後継者は承継後5年間、代表者として会社を維持し続けることが求められます。また、雇用要件として「承継後5年間で毎年、雇用の8割を維持する」という条件がありますが、特例措置では一定の場合に緩和されています。

猶予を受けた税額は、後継者が株式を売却・廃業した場合などに確定(猶予が取り消される)します。制度の適用を受けた後も、継続的な届出・報告義務があるため、税理士との連携が不可欠です。

株式移転の実務ポイント

議決権比率の設計

株式を後継者に移転する際は、議決権比率の設計が重要です。会社の重要事項を単独で決定するには3分の2以上(特別決議)の議決権が必要です。後継者が安定した経営を行うためには、少なくとも過半数(普通決議)、できれば3分の2以上の議決権を確保することが望ましいです。

現経営者が引退後も一定の影響力を残したい場合は、種類株式(拒否権付株式・議決権制限株式など)の活用も選択肢の一つです。ただし、種類株式の導入には定款変更・株主総会の特別決議が必要なため、早めの準備が求められます。

名義株の整理

中小企業では、設立時に形式的に名義を借りた「名義株」が残っているケースがあります。名義株は、名義人が相続を迎えた場合に株式の帰属をめぐるトラブルの原因となります。承継の準備と並行して、名義株の整理(名義人からの株式取得・確認書の作成など)を進めることが重要です。

まつうら総研では、自社株の現状把握・評価・移転計画の策定・事業承継税制の活用支援まで、株式の引き継ぎに関する一貫したサポートを提供しています。「自社株がいくらになるか把握していない」という段階からのご相談もお待ちしています。

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