「うちは仲の良い家族だから相続トラブルなんて起きない」と思っている方ほど、実際にトラブルが発生したときのダメージが大きいものです。まつうら総研がこれまで関わってきた相続の事例を振り返ると、仲の良かった家族が相続をきっかけに断絶してしまうケースは珍しくありません。
相続トラブルは、財産が多い家庭だけに起きるわけではありません。財産が少なくても、感情的な問題・情報の非対称・生前の介護負担などが絡まることで深刻なトラブルに発展します。このページでは、代表的な相続トラブルのパターンと予防策を解説します。
トラブル事例①:遺産分割での争い
特定の相続人が多くを要求するケース
被相続人の介護を担った相続人が「自分がこれだけ苦労した分、多くもらって当然」と主張するケースはよくあります。民法では「寄与分」として介護等の貢献を評価する制度がありますが、実際の認定は難しく、他の相続人との間で感情的な対立になりがちです。
予防策としては、被相続人が生前に介護への感謝を遺言書に示すか、具体的な財産の配分を遺言書に明記することが有効です。また、介護をした相続人への「特別受益」や「寄与分」を生前から家族で話し合っておくことが重要です。
不動産しか財産がないケース
遺産が自宅不動産のみで現金がほとんどない場合、「自宅に住み続けたい配偶者」と「売却して現金で分けたい子」の間で対立が生じることがあります。この場合、「配偶者居住権」を活用することで、配偶者の居住を保護しながら他の相続人の権利も守る解決策が取れます。
また、代償分割(不動産を相続する者が他の相続人に現金を支払う)も有効ですが、資金の準備が必要です。生前から生命保険を活用して代償金の原資を準備しておくことが理想的です。
トラブル事例②:遺言書に関する問題
遺言書の有効性をめぐる争い
自筆証書遺言の作成要件(全文自筆・日付・署名・押印)を満たしていない場合、遺言書が無効になります。日付が「○月吉日」だけでは無効、代筆は無効など、形式上の不備によって遺言者の意思が実現されないことがあります。
また、「意思能力のない状態で書かされた」「脅迫・詐欺によって書かされた」と主張して遺言の有効性を争う相続人が出るケースもあります。こうした争いを防ぐためにも、公正証書遺言が推奨されます。公証人が意思確認を行うため、後から有効性を覆されにくいというメリットがあります。
遺留分侵害額請求のトラブル
遺言書が「すべての財産を長男に相続させる」といった内容で、他の相続人の遺留分を侵害している場合、遺留分を侵害された相続人から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります。この請求は相続開始を知ってから1年以内(相続開始から10年以内)に行う必要があります。
遺留分侵害額請求があった場合、遺産を受け取った相続人は金銭で遺留分を支払わなければなりません。これが事業承継時に問題となることがあります。会社の株式を後継者に集中させるために事業承継税制や遺留分に関する民法特例を活用することが重要です。
トラブル事例③:預金の使い込み問題
被相続人の生前に、介護や財産管理を担っていた相続人が被相続人の預金を使い込んでいたと疑われるケースがあります。「医療費・介護費用に使った」「生前贈与だった」という主張と、「横領だ」という主張が対立することがあります。
このトラブルを予防するには、介護を担う相続人以外も財産状況を把握できる体制を作ること、通帳の動きを定期的に家族で共有すること、そして経費の領収書を保管しておくことが有効です。財産管理を一人に任せきりにしないことが重要です。
トラブル事例④:不動産の共有問題
「争いを避けるため」に遺産を複数の相続人で共有にした場合、将来大きな問題が生じることがあります。共有不動産は全員の合意がなければ売却・改修・活用ができません。共有者の誰かが死亡すると、その持分がさらに複数人に相続され、共有関係が複雑化します。
また、共有者の一人が固定資産税の支払いを拒否したり、売却を望む共有者と保有を望む共有者が対立したりすることも多くあります。不動産を相続する場合は、なるべく一人の相続人が単独で取得し、他の相続人には代償金を支払う形にすることが、将来のトラブルを防ぐ観点から推奨されます。
相続トラブルを予防するためにできること
相続トラブルを予防するために最も重要なのは、被相続人が生前に明確な意思を示すことです。具体的な予防策をまとめます。
・公正証書遺言を作成する
・エンディングノートで財産一覧・意思を家族と共有する
・生前贈与で財産を計画的に移転する
・生命保険で代償金・納税資金を確保する
・家族会議を定期的に開いて相続について話し合う
・税理士・司法書士・FPなどの専門家を早期に関与させる
相続トラブルは事前の準備で大部分を防ぐことができます。まつうら総研では、経営者・資産家の皆さまの相続対策を総合的にサポートしています。「うちは大丈夫」と思っていても、一度ご相談ください。