「うちに限ってそんな失敗はしない」と思っていた方が、相続発生後に多額の追徴税を求められたり、家族間の関係が壊れたりするケースをまつうら総研は数多く見てきました。相続の失敗は無知や油断から生まれます。そして残念なことに、ほとんどの失敗は「事前に知っていれば防げた」ものです。
このページでは、相続で実際によくある失敗のパターンを整理し、それぞれの原因と予防策を解説します。経営者・資産家の方はもちろん、一般のご家庭にも当てはまる内容が含まれています。ぜひご自身の状況と照らし合わせながらお読みください。
失敗①:相続財産の申告漏れ
申告漏れが起きやすい財産の種類
相続税の申告で最も多い失敗が、財産の申告漏れです。現金・預金・不動産といった主要財産は把握できていても、以下のような財産が漏れるケースが多く見られます。
まず、故人が保有していた複数の銀行口座。長年使っていない口座や、家族に知らせていなかった口座が相続後に判明することがあります。次に、生命保険の死亡保険金。受取人固有の財産ですが「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。加入していた保険の全容を家族が把握していないケースが多いのです。
また、貸付金・未収金・ゴルフ会員権・有価証券・暗号資産なども見落とされやすい財産です。国税庁はKSKシステム(国税総合管理システム)によって資産情報を管理しており、申告漏れは税務調査で発見されるリスクが高いです。
名義預金の問題
特に注意が必要なのが「名義預金」です。これは、親が子や孫の名前で口座を作り、実質的に親が管理・支配している預金のことです。口座の名義は子や孫でも、実態として被相続人の財産とみなされ、相続財産に含まれます。
贈与としての実態(通帳・印鑑の管理者、資金の流れ、申告の有無など)がない場合は、税務署に名義預金と判断されます。「子ども名義の口座に毎年お金を入れていた」という場合でも、贈与税の申告をしておらず、子が通帳を管理していなければ名義預金とみなされる可能性があります。
失敗②:特例・控除の適用ミス
小規模宅地等の特例の適用失敗
小規模宅地等の特例は、被相続人の自宅(特定居住用宅地等)について、330㎡まで評価額を最大80%減額できる強力な制度です。しかし、この特例には適用要件が細かく定められており、要件を満たさなければ適用できません。
よくある失敗が「同居していたつもりでいたが、住民票の移動が間に合っていなかった」「相続発生後にすぐ自宅を売却してしまい、申告期限まで保有していなかった」といったケースです。特例の要件を事前に確認せずに行動してしまうことで、数百万円単位の税負担の差が生じることがあります。
配偶者の税額軽減を正しく活用できないケース
配偶者の税額軽減は、配偶者が相続した財産が1億6,000万円以下か法定相続分以下であれば、相続税がかからない制度です。非常に有利な制度ですが、「配偶者に集中させすぎると二次相続(配偶者が亡くなったときの相続)で子の税負担が増える」という落とし穴があります。
一次相続の時点で税負担を最小化しようと配偶者に財産を集中させると、二次相続では配偶者控除が使えない(配偶者が亡くなるため)上に、基礎控除の計算上の相続人数も減り、かえって多額の税が発生することがあります。一次相続・二次相続を通じた税負担の総額を試算した上で遺産分割を決めることが重要です。
失敗③:遺産分割の失敗
遺言書がないまま相続が発生するケース
遺言書がない状態で相続が発生すると、法定相続人全員による遺産分割協議が必要になります。相続人の人数が多い場合、全員の合意を取り付けるのは非常に困難です。特に相続人の中に疎遠な親族・意思疎通が難しい高齢者・海外在住者がいる場合は、協議が長期化することがあります。
協議が10ヶ月の申告期限までにまとまらない場合、有利な特例(小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減)が適用できないまま申告しなければならないこともあります。また、協議がまとまらないまま放置すると、不動産の登記名義変更ができず、売却や活用が一切できない状態が続くことになります。
不動産を共有にしてしまうケース
「揉めたくないから平等に共有にしよう」という選択が、後々深刻な問題を引き起こすことがあります。共有不動産は全員の合意がなければ売却・改修・賃貸ができません。共有者が亡くなれば、その持分がさらに複数の相続人に分散し、権利関係がどんどん複雑化します。
理想的な遺産分割は、それぞれの財産を特定の相続人が単独で取得する「現物分割」や「換価分割」(売却して現金で分ける)です。不動産は誰か一人が引き継ぎ、他の相続人には代償金を支払う「代償分割」も有効な方法です。
失敗④:納税資金の準備不足
相続税は、原則として相続発生から10ヶ月以内に現金一括で納付しなければなりません。ところが、相続財産の多くが不動産や自社株の場合、換金できる現金が足りないケースがあります。
不動産を売却して納税資金を確保しようとしても、相続した不動産の売却には時間がかかります。また、急いで売却すると相場より低い価格になることも多く、損をすることになります。延納(分割払い)や物納(不動産などで納付)という制度もありますが、要件が厳しく、利子税も発生します。
こうした事態を避けるためには、生前から生命保険(死亡保険金は相続人1人につき500万円まで非課税)を活用して納税資金を準備しておくことが有効です。まつうら総研では、財産構成に応じた納税資金の準備計画も含めた相続対策をご提案しています。
失敗⑤:生前対策が遅すぎるケース
相続対策の多くは、時間があればあるほど効果的です。生前贈与による財産移転は年110万円の基礎控除を毎年活用できますが、贈与を始めてから相続発生までの期間が短ければ短いほど移転できる財産は少なくなります。また、2024年の税制改正により、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されることになりました(従来は3年以内)。
「まだ先のこと」と先延ばしにするほど、使える対策の選択肢は狭まっていきます。特に経営者の方は、自社株の評価が高い時期を過ぎてから事業承継を始めると、多額の贈与税・相続税が発生する事態になりかねません。健康なうちに、できるだけ早く専門家と相談することが大切です。
まつうら総研にご相談ください
相続の失敗は、知識と準備があれば防げるものがほとんどです。まつうら総研では、財務トレーナー・中小企業経営コンサルタントとして、経営者・資産家の皆さまの相続対策を総合的にサポートしています。
「何から手をつければよいかわからない」「自分の財産でどのような問題が起きうるか確認したい」という段階でも、お気軽にご相談ください。相続は家族の未来に関わる重要な問題です。後悔のない相続を実現するために、今すぐ第一歩を踏み出しましょう。