「お金が必要なときだけ銀行に行く」——これが最も危険な金融機関との付き合い方です。資金繰りが苦しくなって初めて融資を申し込んでも、審査を通過することは難しい。銀行はリスクのある企業に貸したくないからです。
金融機関との関係は、晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げるとよくいわれます。しかし、正しいアプローチを続けることで、いざというときに頼れるパートナーとしての関係を築くことは十分に可能です。このページでは、財務トレーナーとして多くの中小企業を支援してきた経験から、金融機関との正しい付き合い方を解説します。
金融機関は「信頼」を貸している
銀行の融資担当者が融資判断をする際に最終的に見ているのは数字だけではありません。「この経営者は信頼できるか」「この会社はこれからも続いていくか」という定性的な評価も大きく影響します。
数字の裏にある経営者の考え方・経営の方向性・問題への対処姿勢——これらを日頃から丁寧に伝え続けることが、金融機関との信頼関係を構築する第一歩です。決算書の数字がよくない時期でも、状況を正直に説明し、改善計画を示すことができる経営者は、銀行担当者から「信頼できる」と評価されます。
複数の金融機関と取引を持つ
メインバンクと複数行取引の意義
中小企業の多くは1行との取引に偏りがちです。しかし、メインバンク1行への依存は大きなリスクをはらんでいます。担当者の異動・金融機関の経営方針変更・融資方針の見直しなどにより、突然融資が難しくなることがあるからです。
理想的には、メインバンク(地方銀行または信用金庫)1〜2行・サブバンク1〜2行の合計2〜4行と取引関係を維持することです。複数行と付き合うことで、特定行への依存リスクを分散し、緊急時の資金調達手段を確保できます。
地域金融機関(信用金庫・信用組合)を活用する
大手都市銀行は融資のスコアリング審査が中心で、中小企業の実態を見てくれにくい傾向があります。一方、地域密着型の信用金庫・信用組合は、地域の中小企業を支援することをミッションとしており、担当者が企業の実態をしっかり見て判断してくれる「リレーションシップバンキング」を行います。
売上規模が小さくても・創業間もない企業でも、地域の信用金庫は相談に乗ってくれることが多く、まず最初に関係を築くべき金融機関として最適です。
決算書の見せ方・説明の仕方
決算後は速やかに訪問する
決算が終わったら、結果がよくても悪くても速やかに金融機関を訪問し、決算書を持参して説明することが重要です。「悪い数字だから見せたくない」と思う経営者も多いですが、それは逆効果です。
金融機関は「悪い数字を隠す経営者」を最も信頼しません。赤字や数字の悪化があった場合こそ、その原因と対策を自分の言葉で説明することで、「この経営者はきちんと状況を把握して対処している」という信頼を得られます。
数字以外の情報を積極的に伝える
銀行の担当者は多くの取引先を抱えており、各社の事業内容を詳しく知る機会が限られています。自社の事業内容・競合優位性・受注状況・今後の計画などを定期的に伝えることで、担当者が稟議書を書きやすくなります。
特に「新規取引先の獲得」「大口受注の獲得」「新商品・新サービスの開始」などのポジティブな情報は、積極的に共有しましょう。担当者が上司に報告しやすいネタを提供するイメージです。
融資を申し込む際のポイント
「必要になってから」ではなく「余裕があるうちに」
融資は資金が底をつく前に申し込むことが鉄則です。手元資金が十分にある状態で申し込むことで、審査担当者に「計画的に資金管理をしている会社」という印象を与えられます。
緊急時に融資を申し込んでも審査時間がかかるため、間に合わないケースがあります。月次で資金繰り表を作成し、3〜6カ月先の資金需要を見越して早めに動くことが重要です。
使途と返済計画を明確に示す
「何に使うか」「どうやって返すか」を明確に説明できることが、融資承認の大前提です。「運転資金に」という曖昧な説明ではなく、「来期の受注増加に備えた仕入資金として、〇〇月から〇〇月にかけて必要」「売上計画〇〇円に対して月次〇〇万円の返済が可能」といった具体性が必要です。
資金繰り表・事業計画書を準備した上で面談に臨むと、審査がスムーズに進みます。
担当者との人間関係を大切にする
金融機関の担当者は数年で異動します。担当者が変わるたびに関係がリセットされるように感じるかもしれませんが、実は支店内での引き継ぎや信頼の蓄積は続いています。どの担当者にも誠実に対応することが、長期的な信頼関係につながります。
また、担当者が来訪した際には時間をとって話を聞き、自社の状況を積極的に共有しましょう。担当者も「情報を得やすい先」として、上司に対して好意的な評価を伝えてくれます。
まつうら総研では、金融機関との関係構築・決算書の見せ方・融資申し込みの準備から交渉まで、財務トレーナーとして経営者に伴走しています。「銀行との関係をうまく築けていない」「融資を通りやすくしたい」という方は、ぜひご相談ください。