会社を設立すると、社会保険への加入義務が発生します。これは役員1名だけの会社(いわゆる一人会社)であっても同様です。社会保険への未加入は行政指導・遡及適用・罰則の対象となるリスクがあるため、法人設立直後から正しく対応することが重要です。
本記事では、社会保険とは何か・どのような会社に加入義務があるか・保険料の計算方法・加入手続きの流れについて、中小企業経営者向けにわかりやすく解説します。
社会保険の種類
「社会保険」という言葉は、広い意味では健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険の総称として使われます。狭い意味では健康保険と厚生年金保険を指すことが多く、実務上は「社会保険(健康保険・厚生年金)」と「労働保険(雇用保険・労災保険)」に分けて扱われます。
本記事では、法人に特有の社会保険(健康保険・厚生年金保険)を中心に解説します。
法人の社会保険加入義務
強制適用事業所とは
法人(株式会社・合同会社など)は、業種・規模・従業員数に関係なく、全て社会保険(健康保険・厚生年金保険)の強制適用事業所となります。これは会社設立時から発生する義務です。
個人事業主の場合は、農林水産業・飲食業・理容業など一部の業種を除き、常時5人以上の従業員を雇用する事業所が強制適用となります。法人は業種を問わず全て強制適用という点で、個人事業主とは大きく異なります。
加入対象となる従業員
社会保険の被保険者となるのは、常時雇用される従業員と役員です。正社員はもちろん、週30時間以上(正社員の4分の3以上)働くパートタイマーも対象となります。
また、2022年10月以降、従業員101人以上の企業では週20時間以上・月収8.8万円以上・2ヶ月超の雇用見込みなどの要件を満たすパートタイマーも加入対象となっています。この基準は段階的に引き下げられており、2024年10月からは51人以上の企業に拡大されました。
社会保険料の計算方法
標準報酬月額による計算
社会保険料は、「標準報酬月額」に保険料率を掛けて計算します。標準報酬月額とは、毎月の報酬(基本給・各種手当)の平均額を、一定の等級(標準報酬月額等級)に当てはめたものです。
毎年4〜6月の報酬の平均に基づいて、9月から翌年8月までの標準報酬月額が決定されます(定時決定)。この決定は年1回ですが、昇給・降給などで報酬が大幅に変動した場合は随時改定が必要です。
保険料率と負担割合
社会保険料は会社(事業主)と従業員が半分ずつ負担します(労使折半)。
健康保険料率は協会けんぽの場合、都道府県によって異なり、全国平均で概ね10%前後です。厚生年金保険料率は18.3%(労使折半のため各9.15%)に固定されています。介護保険料は40歳以上64歳以下の従業員が対象で、健康保険料に加算されます。
役員報酬についても同様に保険料が発生します。役員報酬の設定が会社の社会保険料負担に直接影響するため、役員報酬を決める際は社会保険料の試算も含めて検討することが重要です。
社会保険の加入手続き
新規適用の手続き
法人設立後、速やかに管轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を提出します。提出期限は事実発生から5日以内とされています。必要書類は法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)・事業所の所在地が確認できる書類などです。
新規適用と同時に、役員や従業員ごとに「被保険者資格取得届」を提出します。これにより、各従業員の社会保険加入手続きが完了します。
資格取得・喪失の手続き
従業員が入社した際には「被保険者資格取得届」を提出します。退職した際には「被保険者資格喪失届」を提出します。いずれも事実発生から5日以内が提出期限です。
手続きが遅れると、従業員が医療機関を受診した際に保険証が使えないという問題が生じます。採用・退職が決まった時点で、速やかに手続きを進めることが重要です。
社会保険未加入のリスク
社会保険への未加入は深刻なリスクをもたらします。まず、年金事務所による調査・指導が行われ、遡って最大2年間の未納保険料と追徴金を請求される可能性があります。遡及適用の場合、一度に多額の保険料負担が発生します。
また、従業員から「社会保険に加入してほしい」という要求があった場合、拒否することはできません。未加入の状態を放置すると、従業員の信頼を失い、離職につながることもあります。採用活動でも「社会保険完備」は重要な条件の一つです。
まつうら総研では、社会保険に関する手続きや保険料の試算についてもご相談をお受けしています。不明点があれば、専門家に確認することをお勧めします。