株式会社を経営していれば、毎年必ず開催しなければならないのが株主総会です。しかし、「株主総会なんて自分一人が株主だからどうせ形式的なもの」と軽視して、開催をおろそかにしている中小企業経営者は少なくありません。
株主総会は、会社法上の重要な手続きです。適切に開催・記録していないと、後になって「決議が無効」「議事録がない」という問題が生じ、融資審査・M&A・事業承継の場面で重大な障害となることがあります。まつうら総研では、株主総会の適切な運営は「形式」ではなく「会社の信頼性を支える実務」と考えています。本記事では、株主総会の基礎から実践的な運営方法まで解説します。
株主総会とは何か
株主総会とは、株式会社の最高意思決定機関です。会社の所有者である株主が集まり、会社の重要な事項について決議を行います。取締役会(取締役会設置会社の場合)や代表取締役は、株主総会で決定された基本方針に基づいて会社を運営します。
中小企業では、経営者と株主が同一人物(または同族)であることがほとんどですが、それでも会社法の規定に従って株主総会を適切に開催する義務があります。「自分が100%株主だから総会は不要」という考えは誤りです。会社法は、株式会社である限り、株主総会の開催を要求しています。
定時株主総会と臨時株主総会
定時株主総会
定時株主総会は、毎事業年度終了後の一定時期に開催が義務付けられている株主総会です。会社法では、事業年度終了後3ヶ月以内に開催することが求められています(定款による定め・振替株式を利用している場合は異なる)。
一般的な3月決算の会社では、6月末までに定時株主総会を開催します。12月決算の会社であれば、3月末までが期限です。定時株主総会では、計算書類(貸借対照表・損益計算書など)の承認・役員報酬の決定・配当の決定などを行います。
臨時株主総会
定時株主総会以外に、必要が生じた際に随時開催できるのが臨時株主総会です。役員変更・定款変更・合併・事業譲渡・増資など、定時株主総会の開催時期を待てない重要事項が生じた場合に開催します。
臨時株主総会は取締役が招集するのが原則ですが、一定要件を満たす株主も招集を請求できます。中小企業では少ないケースですが、株主間の対立がある場合には、臨時株主総会の招集をめぐる紛争が生じることもあります。
株主総会の決議の種類
普通決議
議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で可決される決議です。役員(取締役・監査役)の選任・解任・役員報酬の決定・計算書類の承認・剰余金の配当などが普通決議事項です。
中小企業の定時株主総会で扱う事項のほとんどが、この普通決議によって決定されます。
特別決議
議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上で可決される決議です。定款変更・会社の解散・合併・株式の併合・事業全部の譲渡・役員の責任免除などが特別決議事項です。
特別決議は普通決議より高い賛成割合が必要なため、より重大な会社の変更に用いられます。中小企業でも、事業譲渡や定款変更を行う際には特別決議が必要となります。
特殊決議
より高い賛成割合が要求される決議です。全株主の半数以上かつ議決権の4分の3以上の賛成が必要な事項(非公開化など)や、全株主の承認が必要な事項があります。通常の中小企業運営ではほとんど発生しませんが、事業承継・M&Aの場面で関係することがあります。
株主総会の開催手順
1. 招集の決定
取締役(取締役会設置会社の場合は取締役会)が、株主総会の招集を決定します。招集事項として、日時・場所・目的事項(議題)を決定します。議題は事前に定めなければならず、議題に記載のない事項は原則として決議できません。
2. 招集通知の発送
非公開会社(株式の譲渡に制限がある会社)の場合、株主総会の日の1週間前までに招集通知を発送しなければなりません(定款で短縮可能)。公開会社の場合は2週間前が必要です。
中小企業の多くは非公開会社です。招集通知には、日時・場所・目的事項(議題)を記載します。書面または電磁的方法(メール等)で通知することができます。なお、株主全員の同意があれば、招集手続きを省略して株主総会を開催することも可能です(書面決議の活用)。
3. 株主総会の開催
株主総会では、議長(通常は代表取締役)が進行を担当し、各議題について審議・採決を行います。中小企業では、経営者一人が株主・議長・取締役を兼ねているケースも多いですが、形式的であっても適切に手続きを踏むことが重要です。
取締役・会計参与・監査役・会計監査人は、株主から質問を受けた場合に説明義務を負います。
4. 議事録の作成
株主総会が終了したら、遅滞なく議事録を作成しなければなりません(会社法第318条)。議事録には、開催日時・場所・出席した株主・株主総会の経過の要領・決議の内容・その他法令で定められた事項を記載します。
議事録は株主総会の日から10年間、本店に備え置く義務があります。株主・会社債権者は議事録の閲覧・謄写を請求できます。融資審査・登記手続き・事業承継の場面でも議事録の提出を求められることがあるため、毎年確実に作成・保管することが必要です。
書面決議・みなし決議の活用
会社法では、実際に集まらなくても株主総会の決議とみなす「書面決議(みなし決議)」を認めています。取締役が総会の目的事項について提案し、全株主が書面または電磁的方法で同意した場合、株主総会の決議があったとみなされます。
中小企業、特に株主が経営者一人または家族のみの場合、毎年書面決議で定時株主総会を処理しているケースがあります。書面決議でも、議事録(みなし決議議事録)の作成・保管は必要です。手続きを省略したとしても、記録の作成は怠らないようにしてください。
株主総会で扱う主な議題
定時株主総会の主な議題
定時株主総会で必ず扱う主な議題は以下のとおりです。
計算書類の承認(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表)は、毎年の定時株主総会における最重要議題です。剰余金の配当を行う場合も株主総会の決議が必要です。
役員の任期が満了する場合は、取締役・監査役の選任または再任を行います。株式会社の取締役の任期は原則2年(非公開会社は最長10年)です。役員報酬を変更する場合も、株主総会の決議が必要です。
臨時株主総会で扱う主な議題
役員の途中辞任・死亡に伴う後任者の選任・定款変更・会社の重要な資産の譲渡・合併・事業譲渡・増資(募集株式の発行)などが臨時株主総会の議題となります。
特に増資・事業譲渡・合併は、会社の根本に関わる重要事項であり、適切な決議なしに行うと法的に無効となるリスクがあります。
株主総会を適切に運営することの重要性
中小企業で株主総会の手続きが疎かになりやすい理由の一つは、「結果はわかっているから手続きは形式的なもの」という認識です。しかし、株主総会の記録が不適切な場合、以下のような問題が生じることがあります。
融資審査では、金融機関から過去の株主総会議事録の提出を求められることがあります。議事録がない・内容が不正確な場合、審査に支障をきたします。事業承継・M&Aでは、デューデリジェンス(企業調査)の過程で株主総会議事録が精査されます。手続きに瑕疵があると、取引条件に影響することがあります。
登記手続きでは、役員変更や定款変更の登記申請には株主総会議事録の添付が必要です。議事録がなければ登記できません。
まつうら総研では、株主総会の適切な運営を法人運営の基本として経営者にお伝えしています。毎年の定時株主総会を確実に開催し・記録し・保管することは、経営者の基本的な義務です。
まつうら総研へのご相談
「株主総会を今まで開催してこなかった」「議事録の書き方がわからない」「株主構成の変更に伴う手続きが必要になった」というお悩みをお持ちの経営者の方は、ぜひまつうら総研にご相談ください。
財務トレーナー・経営コンサルタントとして、会社法上の手続きの整備から、適切な株主総会運営の仕組みづくりまで、御社の実情に合わせてサポートいたします。過去の未実施分の整理から今後の運営方法の確立まで、一緒に考えます。お気軽にお問い合わせください。