社内ルールの整備方法

中小企業が優先して取り組むべき規程づくりの手順と実践ポイントを解説します。

社内ルールの整備方法

「社内ルールは必要とわかっているが、どこから手をつければ良いかわからない」という声を、経営者の方から頻繁に聞きます。会社規模が小さいうちは口約束や慣例で業務が回っているように見えますが、従業員が増え・事業が拡大するにつれて、明文化されたルールの不備が深刻な問題を引き起こします。

社内ルール(社内規程)を整備することは、単なる「お役所仕事」ではありません。トラブルの予防・従業員の安心感の醸成・外部からの信頼獲得・経営者自身の負担軽減という実質的なメリットをもたらす、経営上の重要な投資です。本記事では、まつうら総研の財務トレーナーとしての視点から、社内ルール整備の具体的な方法をお伝えします。

社内ルールが必要になる場面

社内ルールの必要性は、問題が起きてから痛感するケースがほとんどです。以下のような場面で、ルールがないことによる問題が表面化します。

労使トラブル発生時

従業員から「有給休暇を取らせてもらえない」「残業代が払われていない」「ハラスメントを受けた」という訴えがあった場合、就業規則や関連規程が整備されていないと、会社側の正当性を主張することが困難になります。

労働審判・労働局のあっせん・裁判など、労使トラブルは経営者にとって時間的・精神的・金銭的に大きな負担です。事前にルールを整備しておくことが、最も効果的なトラブル防止策です。

経費・資産の不正が発覚した時

従業員が経費を架空計上していた・現金を横領していたという問題が発覚した際に、経費精算規程や現金管理規程がなければ、何が「不正」にあたるかの基準が曖昧になります。不正行為に対して適切な懲戒処分を行うためにも、事前のルール整備が不可欠です。

採用・退職の場面

採用内定者から「有給休暇は何日ありますか」「テレワークは可能ですか」「賞与の基準はどうなっていますか」と聞かれた際に、明確に答えられない会社は採用競争で不利になります。また、退職者が「退職金が払われなかった」と主張するケースでも、退職金規程の有無が争点になります。

整備すべき社内規程の全体像

社内規程には多くの種類がありますが、全てを一度に整備する必要はありません。会社の規模・業種・従業員数・現在抱えているリスクに応じて、優先順位をつけて整備することが現実的なアプローチです。

第一優先:就業規則

常時10名以上の従業員を雇用する事業場では、就業規則の作成・届出が労働基準法上の義務です。10名未満でも、就業規則を整備することを強くお勧めします。就業規則には、始業・終業時刻・休憩・休日・休暇・賃金・退職に関する事項を必ず記載する必要があります。

インターネットで無料のひな形を流用するだけでは不十分です。自社の実際の労働条件(給与体系・所定労働時間・残業代計算方法など)を正確に反映した内容にしなければ、かえってトラブルの原因となります。社会保険労務士への依頼を検討することをお勧めします。

第二優先:経費精算規程

経費精算規程は、交通費・接待費・備品購入・出張費などの業務費用の申請・承認・精算に関するルールを定めた規程です。「いくらまでは担当者が自由に使えるか」「領収書の提出基準は何円以上か」「接待費は誰の承認が必要か」といった基準を明確にします。

経費精算規程がないと、不正経費の申請が生じやすく、また税務調査で経費の合理性を説明しにくくなります。規程の整備により、従業員の公私混同を防ぎ、会社のお金の流れを透明にします。

第三優先:情報セキュリティポリシー

顧客情報・取引先情報・従業員情報などの個人情報・機密情報の管理ルールを定めた規程です。個人情報保護法の改正により、中小企業にも適切な個人情報管理が求められています。

「会社支給のPCを私用に使っていいか」「SNSで業務内容を投稿してもいいか」「退職時に顧客リストを持ち出してもいいか」といった問題に対する明確なルールを定めます。情報漏洩が発生した場合の社会的・法的リスクは非常に大きく、事前の規程整備が欠かせません。

その他の主要な社内規程

上記に続いて整備を進めたい規程には以下のものがあります。

ハラスメント防止規程は、パワハラ・セクハラ・マタハラなどのハラスメント防止に関するルールと相談窓口を定めます。2020年施行のパワハラ防止法により、大企業では義務化され、中小企業でも2022年から義務化されています。

慶弔見舞金規程は、従業員の結婚・出産・弔事・傷病見舞いに対して会社が支給する金額の基準を定めます。従業員への公平な対応と、税務上の処理の明確化に役立ちます。

出張旅費規程は、出張時の交通費・宿泊費・日当の基準を定めます。日当については、規程があることで非課税での支給が可能になるという税務上のメリットもあります。

社内規程整備の進め方

ステップ1:現状の把握

まず、現在どのような規程が存在するかを確認します。就業規則はあるが古い・経費精算は慣例で行っている・ハラスメント規程は名前だけあるが機能していないといった現状を正直に把握することが出発点です。

次に、過去に起きたトラブルや「ルールがなくて困った場面」を洗い出します。これが、優先的に整備すべき規程を特定するための手がかりになります。

ステップ2:内容の設計

規程の内容を設計する際には、自社の実態に合わせることが最も重要です。他社のひな形をそのまま流用すると、「規程には記載があるが実際はそうなっていない」という状態が生じます。これは規程の形骸化を招くだけでなく、実態との乖離がトラブルを複雑にする要因にもなります。

従業員が実際に守れる内容・運用できる基準を設定することが、実効性のある規程を作る上での鉄則です。

ステップ3:専門家との連携

就業規則は社会保険労務士、契約関連規程は弁護士、税務関連規程は税理士というように、規程の種類に応じた専門家と連携することで、法的に有効で実務的な規程を整備できます。

専門家費用を惜しんで不完全な規程を作ることは、後々のトラブル対応コストと比較すると割に合わないことが多いです。規程整備への投資は、将来のリスクへの保険です。

ステップ4:周知と定着

規程を整備したら、全従業員への周知が必須です。就業規則については、従業員が閲覧できる場所への備え置き・電子データでの共有・入社時の説明が求められます。規程の内容を知らなかった従業員に適用することは、場合によっては法的に問題になることがあります。

新入社員の入社時・年1回の定例説明会・法改正に伴う改定時など、定期的に規程の内容を周知する機会を設けることが重要です。

ステップ5:定期的な見直し

社内規程は一度作れば終わりではありません。労働関連法は毎年のように改正されており、規程もそれに合わせて更新が必要です。少なくとも年1回は専門家とともに規程の内容を点検し、法改正への対応・実態との乖離の修正を行うことをお勧めします。

まつうら総研の視点:ルール整備はコストではなく投資

「規程整備にお金をかける余裕がない」という声を聞くことがあります。しかし、労使トラブルが発生した場合の弁護士費用・未払い残業代の支払い・採用難による人員不足のコストと比較すると、事前のルール整備にかかるコストは明らかに小さいです。

まつうら総研では、社内規程整備を経営管理の基盤構築として位置づけています。売上の数字ばかりに目が向きがちな経営者の方でも、組織の土台がしっかりしていなければ、成長は砂の上に建物を立てるようなものです。

「今の自社に何が足りないか」「どの規程から手をつけるべきか」という整理から始めたい方は、ぜひまつうら総研にご相談ください。御社の状況に合わせた規程整備の優先順位と進め方をご提案します。

まつうら総研へのご相談

社内規程の整備・見直しに関するご相談を随時承っております。「就業規則が古いまま放置されている」「経費の不正が気になるが規程がない」「ハラスメント規程を整備したい」など、具体的なお悩みがある方も、「まず何から始めればいいかわからない」という段階の方も、お気軽にお問い合わせください。

まつうら総研の財務トレーナー・経営コンサルタントが、御社の規模・業種・現状の課題に合わせた実践的なご支援をいたします。

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